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法政大学経済学部同窓会同窓会特別講座>川上忠雄教授
同窓会特別講座

経済学の作り直し
川上忠雄 教授
 卒業生の皆さん、「金融論」→「恐慌論」を講義してきました川上です。ちょうど40年間教えつづけ、定年退職まで後1年となりました。ただし、一昨年度から経済原論改め「社会経済学」を教えております。それは、経済学の作り直しに取り組まなくては、という自分の気持ちが強くなり、大きい講義を準備することを自分に強制しようという動機からです。
 日本経済は今大変な危機に陥っています。世界経済もますます異常な様相を強めています。ところが、このように大変な時代にもかかわらず、これまでの経済理論がいずれも現実を説明できなくなってしまっています。

 覚えている人もいてくれるかと思いますが、私の「恐慌論」は、マルクスの理論を批判的に修正して景気循環を扱いましたが、資本家による労働者の支配と搾取という理論の骨格はマルクスを継承し、さらに20世紀に入る前後から恐慌が世界市場統一的に起こらなくなり、その代わり世界市場システムそのもののカタストロフィーが起こるようになるという話をしました。
 マルクスは資本主義の矛盾を告発し、その体制を根底からひっくり返して共産主義を建設する未来を示しました。その経済学は、資本主義批判の拠り所として大変な権威を持ちつづけたグランドセオリーでした。私もこれまで長い間その魅力に捉えられてきた一人でした。しかし、マルクス経済学はずいぶん前から硬直化し、活力を失っていましたが、ソ連社会主義の崩壊によって最終的に信を失ってしまいました。マルクスの大きな枠組みは継承しようとしていた以上、私も局外に立つことはできませんでした。ソ連社会主義はマルクスの描いた理想像からあまりにもかけ離れたものになったとはいえ、マルクスに導かれた革命的実践の産物に違いありませんでした。その意味で共産主義は、アメリカの政治学者ブレジンスキーが喝破したように、「大いなる失敗」に終わったのでした。人類は否応無く市場社会の中で生きなければならないことを思い知らされました。

 ところで、ケインズは、市場経済の重大な欠陥を認めながら、資本主義そのものの転覆ではなく、その市場経済を国家が管理することによって安定的に発展させることを構想しました。1930年代の大不況に直面しても市場経済の重大な欠陥を認めようとしない新古典派を批判したその経済学は、政策国家に指針を与えるグランドセオリーとなりました。そしてアメリカの弟子たちの財政政策と金融政策の巧みな操作は、一時大不況の悪夢を過去のエピソードにしてしまうかに思えました。だが、ケインズ経済学も、スタグフレーションの悪性化のために総需要管理政策が破綻し、信を失ってしまいました。万能の経済管理は幻想に過ぎず、人類は市場社会の中でもっと市場経済を尊重して生きるしかないと思い知らされたのです。
 そうなると、「見えざる手」以降の市場信仰の厚い新古典派経済学がふたたび勢いを盛り返すのも無理はありません。「規制緩和」、「市場に任せよ」が今日の合言葉です。国際的にもグローバルな自由化こそが善です。しかし、果たして新古典派の経済学者たちが危機の現実の分析と役に立つ提言を提供できているでしょうか。とてもそうはいえません。ゼロ金利、金融の量的緩和、日銀の公債買い入れ枠の拡大、外債もオペレーション対象に、さらにそれでも足りなくてインフレ・ターゲッティング。効き目が思わしくない財政政策に変わって、日本ではこれでもかこれでもかと超緩和の金融政策が提案され、次々に実行に移されています。しかし、日銀券は増発できても、銀行貸付の増加、生産の増加には結びつかない。日本経済の長期不況からの脱出は依然としてすすんではいません。それもそのはず、危機脱出の処方箋を書く新古典派経済学者の市場信仰とは裏腹に、市場が膨大な不良債権を抱え込んでいびつになってしまっているからであり、システムに対する信頼が揺らいできているからです。市場そのもの、それも日本だけではなく世界市場システム全体に重大な機能不全が生じているからです。
 こうして結局、経済学そのものが信頼を失ってしまいました。

 今日の危機の時代に対処するために、経済学の作り直しが求められているのだと思います。
 もちろん破綻したと言っても、マルクスやケインズの把握が何から何まで反古になるはずがありません。どこを捨てなければならないのか、そしてどこを活かすべきなのか。より分けることが必要です。新古典派経済学だって、市場経済の一面を捉えていることは否定できません。新しく作り直す経済学の中に位置付けるべきなのでしょう。そのほかのさまざまな学派についても同じでしょう。となると、大変な創造的な共同作業になるでしょう。
 残り少ない私にどれほどのことができるかわかりませんが、このような作業の一端を担いたいと考えているところです。そしてできることならこの方向で法政大学経済学部に世の注目を引きたいものだと思っています。

(2003.6.25)

川上忠雄教授 筆者:川上 忠雄(かわかみ ただお)