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法政大学経済学部同窓会>森嘉兵衛賞>第11回
■著者略歴 1984年3月 法政大学経済学部卒業 1989年4月 国際基督教大学行政研究科博士課程前期入学 1997年3月 同博士課程終了(学術博士取得) 現東海大学文明学部助教授 ■講評 本書は、アメリカのディープ・サウス、ミシシッピ州の主権委員会(the Sovereignty Commission)に関する英文の研究書である。 合衆国最高裁の公立学校における人種差別を違憲とした判決に対して、連邦政府に従わず、公民権運動を抑圧して、ジム・クロウ(黒人差別政策)、白人優位の現状維持を目指した委員会であった。1956年に設置され73年に消滅している。 本書は「公民権」と「州権」の対立を軸として委員会の歴史を包括的に記述し、設置の経緯、委員会の背景となる社会的、政治的風潮、17年間の具体的活動、ミシシッピ州の歴史へ与えた影響等を論じている。 委員会が、様々な人物を使い人権を侵害する政治的陰謀を企み、あるいは運動家の評判を落とすことで公民権運動を傷つけようとする活動なども明らかにされている。そして時間の経過に従い各知事や長官の方針が異なり人種差別政策も変化していく様子を実証的に調べている。 筆者のフルブライトによる南ミシシッピ大学への留学が執筆の契機となった本書は、ミシシッピ大学出版局から2001年に出版され、その価値は広く認められている。1998年から閲覧可能となった公文書を広範に利用した十分な信頼性と量を持つ最初の学術書である。 公文書、研究書、論文の他に、片桐氏自身が行った関係者へのインタヴューも含め多量の口述文献やヴィデオ資料、インターネット資料を駆使して書かれた徹底的な同時代史であり、アメリカアカデミズムの英語文体を自由に使いこなして書かれている。州行政への批判的研究であるにもかかわらず、視点の客観性、公平性と学問的レヴェルの高さゆえに、ミシシッピ州の最優秀歴史書に贈られるマクレモアー賞を受賞しており、日本ではアメリカ学会清水博賞を受賞している。 この新進アメリカ現代史学者の卓越した業績は、日本のアメリカ研究の水準の高さを示しているが、同時に学問を志す後輩たちにとり大きな励ましであり、森嘉兵衛賞に値するものである。
経済学部教授 曽村 充利(英文学専攻)
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