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法政大学経済学部同窓会森嘉兵衛賞>第12回
森嘉兵衛賞

第 12 回 (2004年) 受 賞 者
A賞山口 秋義『ロシア国家統計制度の成立』(梓出版社, 2003)
山口秋義氏  2003年度の第12回森嘉兵衛賞は、審査委員会においてA賞を山口秋義氏の『ロシア国家統計制度の成立』(梓出版社、2003年2月出版)と決定した。山口氏は、本学の大学院修士課程、博士課程で伊藤陽一教授の指導をうけ、統計学を学び、1986年に九州国際大学経済学部専任講師に就任し、2002年から同教授となり今日に至っている新進の統計学者である。
 森博美教授の講評にあるように、受賞作品は、ロシアの統計制度の成立についての通説を批判しつつ、独自の見解を実証的に展開したもので、ロシア統計制度史のみならず、日本の統計制度史にも興味深い提言となっている。本書は、大変地味な研究であるが、森嘉兵衛先生の業績を偲ぶにふさわしい労作である。
 なお残念ながら、今年度もB賞の該当者はいなかった。

2004年3月25日

森嘉兵衛賞審査委員会
委員長 つる見_誠良
※「つる」は雨かんむりに[金鳥]
_員 増田 _寿男
飯田 __
森 __博美
村串 仁三郎

著者略歴
1962年1月 生まれ(本籍:愛知県刈谷市)
1984年3月 日本福祉大学経済学部卒業
1989年3月 法政大学大学院社会科学科修士課程終了
1990年10月 ソ連政府留学生としてモスクワ経済統計大学留学(1年間)
1992年3月 法政大学社会科学科博士課程単位取得

1984年4月 株式会社日ソ貿易入社
1994年4月 九州国際大学経済学部専任講師
1998年4月 同 助教授
2002年4月 同 教授 現在に至る

講評
『ロシア国家統計制度の成立』  『ロシア国家統計制度の成立』の著者である山口秋義氏は、1987年から1993年まで本学大学院社会科学研究科経済学専攻に在籍し、伊藤陽一教授の指導の下、ロシアにおける政府統計のあり方を主要なテーマとして研究を行ってきた若手研究者である。同氏は、博士後期課程在学中の1990年9月から1年間、文部省派遣留学生としてモスクワ経済統計大学に派遣され、その間、ロシア国立歴史公文書館等で入手した一次資料に基づき、この分野における従来研究の見直しに精力的に取り組んできた。その主要な研究成果をまとめたのが前掲書である。以下にその概要を紹介する。
 この分野での従来研究によれば、ソ連の国家統計制度は、中央集権的統計機構と報告統計制度という2つの要因によって特徴づけられる。筆者は、ソ連において国家統計の基盤が整備される1917〜30年、すなわち革命から新経済政策(ネップ)期、さらには集団化を経て第1次5ヶ年計画が開始される時期に焦点を当て、上記の2要素をキーワードとして国家統計制度の成立過程をオリジナルの資料に基づき検証している。
 中央集権的統計機構について従来研究はその根拠を社会主義政権の成立に求めてきた。これに対し筆者は、ロシアの国内事情というよりはむしろ十月革命に先立つ時期における西欧諸国を中心とする万国統計家会議(International Statistical Institute:ISI)、なかでも1867年にフィレンツェで開催された第6回大会の決議に象徴される当時の西欧諸国における政府統計制度の組織化の影響を強く受けていたと指摘する。ただ、大会決議に盛り込まれていた国家統計組織の政治からの完全な独立性については、その後の革命政権により葬り去られた。他方、報告統計制度についても、社会主義計画経済がそれを必然的に随伴するとする従来研究に対し筆者は、革命当初、政府による統計情報の収集は基本的に調査ベースでのものであり、地方統計機構の脆弱性、さらには5ヶ年計画の導入による計画化のプロセスの中でそれが次第に調査中心から報告ベースでの統計作成へと移行するとしている。
 その意味で、中央集権的統計機構と報告統計制度とを直ちにソ連における国家統計の2大特徴として論じるのではなく、それぞれの成立過程を異なる歴史的な規定要因と関連づけ論じる点に筆者の研究の独自性がある。こういった分析視角は、社会主義政権崩壊後の移行経済下で、ロシアが旧ソ連の国家統計のあり方からどの部分を継承し、またどの部分についての見直しを迫られるかを見る上で、ロシアだけでなく他の移行経済諸国における国家統計システムの設計にとっても意義がある。
 ところで、世界の国家統計組織の現状を見るに、北欧各国では政府統計は調査に依拠することなく基本的にレジスターベースへの移行を済ませており、ドイツやフランスなども、統計の調査環境の悪化への対処策として、各種登録データを活用した統計作成システムの実用化に向けてその実施設計に入りつつある。先進諸国の中でこの種の取り組みが最も立ち遅れたわが国でも、早晩、政府統計作成システムの有効な選択肢の候補として、登録資料に基づく統計作成の可能性を考慮せざるを得ないものと考えられる。その点で、報告統計制度の意義や問題点の具体的な解明は、わが国の政府統計の将来にとっても有効な示唆を与えうる。
 以上のような理由により、同氏の研究が森嘉平賞の授与に値するものと考える。

2004年2月22日
経済学部教授 森 博美