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法政大学経済学部同窓会>森嘉兵衛賞>第15回>B賞
B賞 | 細田 亜津子『雲の上の哲学者たち』(西田書店,2006.5) |
■著者略歴
東京生まれ
学歴
1986年3月 法政大学文学部日本文学科卒業
1995年4月 法政大学大学院社会科学研究科経済学専攻入学
1997年3月 同経済学専攻終了 経済学修士
職歴
1986年3月 学校法人東放学園講師就任
2000年4月 長崎国際大学人間社会学部国際観光学科助教授就任
2004年4月 同教授就任
今日に至る
研究業績
著書
1996年 『トラジャ紫の大地』(西田書店)
2006年 『雲の上の哲学者たち』(西田書店)
主要論文
2005年 「東・東南アジアにおける沖縄の地域間ネットワークの形成と変遷に関する総合的研究」科学研究費助成(B)成果報告書所収
2006年 「トラジャにおける葬制と表象の地域的特徴」、法政大学沖縄文化研究所編『沖縄文化研究32』
2006年 「トラジャ農村社会の伝統的・制度的特徴」、『経済志林』第73巻第3号
その他、書評、論文、報告書など多数
■講評
今年度の森嘉兵衛賞B賞『雲の上の哲学者たち』(西田書店,2006年、1,500円、全206頁)の著者細田亜津子氏は、法政大学文学部では琉球文学、沖縄の文化、歴史を学び、1986年に卒業後、社会人として過ごしつつ、91年にインドネシアのトラジャ山岳民族と出会い、その後トラジャを毎年訪ねては、トラジャについて体験し研究を続けてきた。その成果は96年に『トラジャ紫の大地』(西田書店)を出版している。それに先立って著者は、95年に法政大学社会科学経済学専攻修士課程の社会人コースに入学し2年間開発経済学を学び、その後2000年に長崎国際大学の助教授に就任し、今日にいたっている大変ユニークな学者である。
本書の目次は、以下の通りである。
トラジャ族への誘い−まえがきにかえて−
雲の上の愉快な人々
哲学者の住む山並み、スローライフを笑う、煙草をふかすアンベ、シリ―を噛むネーネ、漆黒の闇、いい人マルティーン・ルター、芋を炊いてくれるインド・マリア、ついに歯がなくなるティンティン、笑い皺のサンペ、髪の薄さを気にするサムエル、トラジャ族とクマンデ・ボボ
トンコナンで過ごす生と死
トンコナン=美しい建物、建物は人を守るもの、塁塁たる死の歴史、「死のために生きる人々」への批判、死を抱き生きる爽快さ、地に這う大樹の家族、カオスな葬儀
トラジャは思想空間
水牛は訴える、豚は豚、犬の孤独、ポン・ティク=非戦の英雄,女の権力・男の従属、職人の技をみる、「へいほ」の悲哀、神への信仰
少数民族は哲学者
サンダ川で涙をながす
あとがき
本書は表題と目次からは分かりにくいが、インドネシア、スラウェシ島のタナ・トラジャ県の山岳少数民族についての経済、文化、民俗、生活について長年の滞在を経て観察した記録である。それはここでは詳論できないが、山岳に追いやられたゆえに未開に近い少数民族が維持してきた、また現代人が失った人間らしい生活、同じことだが家族、共同体、モノと人、生と死との関係の中での人間らしい有り様が、近代化の波に曝されながら、残存し維持されている実態を長年の観察、トルジャ族との交流の中で把握し報告したものである。
目次からわかるように、本書はルポ形式をとっていて、学術的論文の形式をとっていない。しかし本書は単なるルポではなく、著者が別途に発表している学術論文に裏うちされたものであり、その学術論文をディテイルにおいて補完する山岳少数民族についての優れた研究となっている。未開少数民族についての観察、実態の報告という課題は逆に言えば、学術論文という形式では表現しにくいという性格をもっている。
従って著者は、一方ではトラジャ族についての学術的論文をものしながら、さらに本書のような形式でトラジャ族について表現を試みていると思われる。ちなみに著者は、1999年には「インドネシア観光開発と現代社会−山岳民族トラジャの事例研究−」(村串・安江編『レジャーと現代社会』,法政出版,1999年)、「タナ・トラジャ県における現代スツーリズム動向と今後の課題」(長崎国際大学論集第3巻,2003年)、「トラジャ農村社会の構造分析」(長崎国際大学論集第5巻,2005年)、「トラジャにおける葬制と表象の地域的特徴」(『沖縄文化研究』32)その他数本のトラジャ関連論文を公表しており、トラジャ研究の第一人者である。
また氏は単にトラジャに関して研究するだけでなく、失われつつあるトラジャの文化遺産(特に高床式舟形建築物)の保護や日本とトラジャの交流にも貢献しており、1992年にトラジャ県文化教育庁から、また2000年にはトラジャ県知事、県議会議長から表彰され、氏の学術的な活動が高く評価されている。
細田亜津子氏の『雲の上の哲学者たち』は、昨年度の森嘉兵衛賞B賞の森廣正氏『ドイツで働いた日本人炭鉱労働者』とあわせ、日本の地方史に限定せず、国際的な地方史研究として、地方史の研究に授与するB賞に相応しい研究として評価できる。
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