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法政大学経済学部同窓会森嘉兵衛賞第15回>特別賞
森嘉兵衛賞

第 15 回 (2007年) 受 賞 者
特別賞村串 仁三郎『大正昭和期の鉱夫同職組合「友子」制度』(時潮社,2006.7)

著者略歴
東京生まれ

学歴

1935年10月 東京生まれ
1958年3月 法政大学社会学部(2部)卒業
1963年3月 法政大学大学院社会科学科経済学専攻修士課程修了
1969年3月 同博士単位所得

職歴

1969年4年 法政大学経済学部専任助手
1970年4月 同専任講師
1971年4月 同助教授
1980年4月 同教授
2006月3月 同学部定年退職
2006月4月 法政大学名誉教授

研究業績

著書
1972年 『賃労働原論』(日本評論社)
1975年 『賃労働理論の根本問題』(時潮社)
1976年 『日本炭鉱賃労働史論』(時潮社)
1978年 『賃労働政策の理論と歴史』(世界書院)
1989年 『日本の伝統的労資関係−友子制度史の研究』(世界書院)
2000年 安江孝司との編著『レジャーと現代社会』(法政大学出版局)
2005年 『国立公園成立史の研究』(法政大学出版局)
2006年 『大正昭和期の鉱夫同職組合「友子」制度』(時潮社)

 著作その他多数

論文多数

解説
大正昭和期の鉱夫同職組合「友子」制度  2006年7月に時潮社から出版された『大正昭和期の鉱夫同職組合「友子」制度−続・日本の伝統的労資関係−』は、428頁からなる大冊の学術書である。このような学術書に対して、軽薄にして舌足らずな講評・批評を加えることは,人倫に悖る行為と言わねばならない。よって小生は、ここでの講評は控えさせていただく。
 近いうちに法政大学経済学部学会の『経済志林』に,本書に関するレビュー・アーティクルを発表する予定なので,そちらをお読みいただきたいたいと思う。
 本書の著者・村串仁三郎さんについては、法政大学経済学部に関係ある人々の間ではたいへん知名度が高い人なので、あらためて紹介する必要がないであろうが、あまり知られていない一面を一つだけここで紹介しておきたい。
 村串さんは、約30年の長きにわたって飽きることなく鉱山の飯場の研究を続けてきた。
 そして鉱山の飯場に関して、4冊の学術書を書き上げた。

 1.『日本炭鉱賃労働史論』(時潮社,1975年)
 2.『日本の伝統的労資関係』(世界書院,1989年)
 3.『日本の鉱夫−友子制度の歴史−』(世界書院,1998年)
 4.『大正昭和期の鉱夫同職組合「友子」制度』(時潮社,2006年)

 当時日本の経済学界では、鉱山の飯場の作業組織(ワーク・オーガニゼーション)は親分・子分の封建的制度を基本としており、このような封建的関係が昭和30年代に至るまで日本社会の“基底”に存在してきた、といった考え方が−講座派とか代々木派といわれている−主流でした。村串さんはこの誤りに満ちた見解に真っ向から挑戦し、緻密な実証研究をもとにして講座派的日本賃労働史を、完膚なきまでに粉砕してしまいました。
 村串さんが成しとげた業績は、日本の金属鉱山労働史の金字塔とも言えるすばらしいものです。世界的に高い水準の労働史研究であるといっても過言ではありません。法政大学経済学部で学んだ者にとって、南部藩経済史研究で金字塔を打ち立てた森嘉兵衛とともに、村串さんという労働史家を生んだ学部であることは、大きな誇りになることでしょう。
 日本の鉱夫たちは18世紀後半以来、友子という同職組合運動を展開してきました。村串さんの研究は、世界でもっとも先進的であった友子と、友子を中核にして形成されていた鉱山の労働組織とその文化に向けられた熱いオマージュなのである。

経済学部教授 萩原 進